two-nagual」の世界を体現する、スペシャルインタビュー「ひと」。
今回の「ひと」は、東京・大崎でヨガ教室「ストラーラ東京」を経営する、石毛志穂さん。
両親の介護をきっかけに起業し、新たなヨガの在り方を、自然体で拡げています。

いしげ しほ/アメリカ、オハイオ州シンシナティ生まれ。小学校の途中から高校卒業まで、大阪・神戸で過ごす。卒業後はサンフランシスコをベースに、ユナイテッド航空にキャビンアテンダントとして就職。光半導体の製造機器、ベンチャー企業、医療機器、スポーツアパレルなどに従事。その後、2010年にリーボック(アディダスジャパン)に就職し、帰国。両親2人の介護を契機に、2015年、ストラーラ東京を設立する。現在は、ストラーラ東京を運営する傍ら、都内を中心にヨガイベントや企業クラスを企画・運営。

ヨガを仕事にするキッカケは、両親の介護

私が、ヨガの教室を始めたキッカケは、2人の両親の介護です。
介護という家族の危機で、ファミリーファーストを考え、勤めていた会社を辞めました。
それまでの私は、情熱とやりがいを持って、グローバル企業で仕事をバリバリしていました。
でも、両親の介護という生活を支えながら、楽しさや優しさのある仕事を考えた時、ヨガ以外、私には思いつきませんでした。
介護というライフスタイルに合わせて、ヨガというワークスタイルを選んだのです。
その時、たまたまご縁があって、「ヨガスタジオがあると良いよね」というゴルフ練習場で、今のヨガ教室をさせていただいています。
凄い巡り合わせです。

ヨガを教える資格は、実は、2007年に取っています。
当時は普通のオフィスワーカーでしたが、アメリカのヨガで好きなスタイルの講師養成がたまたまあって、趣味の延長線で取得しました。
開催地はインドネシアのバリ島で、ヨガのプラクティスを少し深められたらいいな、という気持ちで資格を取りに行きました。

航空会社でキャビンアテンダントとして働く(ラスベガスでの研修シーン
ニューヨークでのヨガ研修

今まで、いろいろな仕事をしてきました。
アメリカの大学を卒業して就いたのは、ユナイテッド航空のキャビンアテンダント。
国際線、国内線と6年ほど働きました。
その後、日本の光半導体の製造機器の小さな企業で、アメリカ支部のスタートアップのマネジメントや通訳などをしました。
さらに、医療機器、ベンチャー、スポーツアパレルなど、とりあえず“面白そうであれば、何でもチャレンジ! やるからには300%!”でした。

その頃はサンフランシスコにいたのですが、仕事が楽しすぎて、日本に戻るつもりは全くありませんでした。
でも10年ほど前、日本にいる両親のカラダの様子が少しおかしくて、それが気になって、日本に戻ることにしたのです。
人生、本当に何があるかわかりません。
今でもふと、東京で仕事をしている自分を不思議に思います。

グローバルなスポーツカンパニーに転職して、日本へ

ヨガは、生徒さんのハートに触れる仕事

ヨガは、今までで一番楽しい仕事なので、困ったということは一度もありません。
ヨガの仕事は、魅力だらけです。
皆さんに教えながら、自分のライフスタイルを守って、自分自身も心身ともに健康で生きていける、素晴らしい仕事です。

そしてヨガは、皆さんのハートに触れる仕事です。
心が触れ合っている生徒の方々は、年齢は関係ない、私の友だちであり、ファミリーであり、同志であり、師でもあります。
掛け替えのない、最高の仲間、ビッグファミリーです。

繋がりは、教室だけでありません。
ビッグファミリーである生徒さんたちと、食事に行ったり、祝い事を共有したり、人生の潤いとなる楽しい時間を共有しています。

今は、91歳の生徒さんとも、親しくさせていただいています。
91歳というと、年齢も異なり、価値観も違うと思われますが、考え方やマインドへの共感は、親友以上の繋がりを感じています。
また人生の先輩としてのアドバイスや、ビジネスのアイディアのシェアなどのディスカッションもさせてもらっています。

指導者として一番大切なのは、自分のスキルや知識など、常に生徒さんの10倍も100倍も、先に行っていることです。
生徒さんの上達は凄く早いので、自分も、常に進化し続けなければなりません。

91歳の友人Yさん
東京・虎ノ門の地域活性化プロジェクト、コミュニティ作りを2年間サポート

ヨガを始める人たちに、共通していること

ホスピタリティも重要です。
ヨガを始める方は、精神的に疲れていたり、人生に迷いがあったり、何かチェンジが欲しかったりする場合が多いと思います。

ヨガや瞑想を実践すると、ストレスが減り、心身の調和が取れます。
集中力も上がり、充足感を感じる人たちがたくさんいます。
呼吸に合わせてカラダを伸ばすことで、自然に心も伸びるから。
ヨガは、“心のストレッチ”でもあるのです。


ヨガの指導者は、生徒の皆さんの人生のパフォーマンスが、最大限に引き上げられるよう心身の調整するのが仕事です。
日常、忙しくしている皆さんに、ヨガの空間では「心地よくなっていただく」ことが、私の最大のミッションだと思っています。

東京・虎ノ門ヒルズでの大規模なヨガイベントの立ち上げにも携わる

日本ではまだ少数の、心地よさを目指すヨガ

私が、皆さんとご一緒するヨガは、心地よいことを目標にしたヨガです。
入門者の方にも、辛くなく、ヨガが嫌いにならないヨガ(笑)。
それが、ストラーラヨガです。
ストラーラヨガは、音楽に合わせてカジュアルに、楽しく自然に、心地良い範囲で動きます。

ストラーラは、ニューヨーク発祥の、新しいスタイルのヨガ。
共同創設者はタラ・スタイルズとマイク・テーラーズ夫妻で、脱力と呼吸を優先し、実践者それぞれが自分にとって、心地よい動きをすることを重要視します。

ストラーラヨガでは、ポーズの正しさを追求しません。
従来のヨガの流派は、いわばヨガの100点の正解、ポーズの正しさ指導・誘導していくのが主流です。
分かりやすい例では、ポーズで静止した際、呼吸は5回と決まっているなどです。

一方、ストラーラヨガは、自分が心地よいスタイルを見出せれば100点です。
自分の呼吸に合わせて、動きをカスタマイズできるのです。
いろいろな流派のヨガを勉強しましたが、自由度が高いので、私は一番気に入っています。

アメリカ・ニューヨークのストラーラヨガ本部
ストラーラヨガ創立者のタラ・スタイルズとマイク・テーラー

ヨガを嫌いになるキッカケも、“カラダが硬い……”

初心者に向けて、細心の注意を払っているのは、“ヨガが嫌いならない”こと。
一度ヨガを嫌いになった方は、その後、絶対に戻って来てくれません。
初めてヨガをする方には、心地よく、のびかやかに、カラダが楽になったという感覚を得てもらいたいので、そうした構成にします。

ヨガが嫌いになる方たちの理由は、“カラダが硬いから”です。
カラダを軟らかくしようと、始めるのにも関わらずです……。
「ポーズをして、静止することが大変だった」という方はたくさんいます。
一般的なヨガのクラスでは、ポーズを取って静止します。
私のクラスは、静止をせずに、どんどん動きます。

動くことで、自分にとって心地よい場所を見つけられます。
心地良い感覚は、ひとごとに異なるので、そのヨガは、“自分のヨガ”になっていくのです。

ストラーラヨガをベースに、新たな形へ

これから私は、ストラーラの延長で、「クーシーヨガ」というスタイルを作ろうと考えています。
“音楽をかけて、のびやかに心地よく”のは、ストラーラと同じなのですが、動きを繰り返し行うことで、自然にヨガになってゆくことを理想にしています。
教科書的なヨガは、主に正しいポーズを指導しますが、「クーシーヨガ」はこうした指導はゼロです。
呼吸と、カラダを自然に動かす誘導だけします。
ポーズを取って、静止することもしません。
もちろん、静止して心地よく感じる場合には、静止もOKです。

言葉にするとかえって難しいのですが、ポーズ自体の説明ではなく、動きの中で結果としてヨガのポーズになっていくよう、導きます。
クーシーは、ハッピーという意味のヒンズー語。
頭の中を空にして、雑念を無にしていくヨガに、私はこれからもチャレンジしてゆきます。

写真提供/石毛志穂(Shiho ISHIGE)