two-nagual」のフラッグシップ企画、「ひと」。
two-nagual」の世界を体現する、各界のスペシャリストが、“仕事観”を語るロングインタビューです。
今回の「ひと」は、日本を代表するトレーナーの友岡和彦さん。
メジャーリーグでのストレングス&コンディショニングコーチを務め、日本に活動拠点を移してからも、スポーツとフィットネスの発展のため、精力的に活動しています。

友岡和彦さん(クリードパフォーマンス) two-nagual「フィットネスキャンプ」特別講師

写真提供/友岡和彦(クリードパフォーマンス) Kazuhiko TOMOOKA

ともおか かずひこ/クリードパフォーマンス株式会社 取締役。MLBフロリダ・マリーンズなど3球団で、ストレングス&コンディショニングコーチを務めた、日本を代表するトレーナー。two-nagualイベントでも活用されている、さまざまなアウトドアスポーツに適したケガ防止とパフォーマンス向上ための「FITNESS CAMP for OUTDOOR」の考案者。

パフォーマンスコーチ

ジブンの職業は、正確には、パフォーマンスコーチです。
パフォーマンスコーチは、スポーツ選手のパフォーマンス向上や、一般の方々の健康増進を手伝う仕事です。
仕事の範囲は、筋力だけでなく、障害予防のための柔軟性や安定性の向上、スピード強化プログラムや、メンタルトレーナーとの連携、食事を管理栄養士と連携して変えてゆくなど、多岐にわたります。
いわば、パフォーマンスを上げる、ディレクターやプロデューサー的な役割と言えます。

アメリカでは、メジャーリーグで、ストレングスコーチとして働いていました。
ストレングスコーチは、選手のカラダの管理をメインに、オフシーズンには筋力やパワーやスピードを上げてゆくフィジカル面のサポートを行っています。
現在のメジャーリーグでは、パフォーマンスコーチという考え方が主流になってきていますが、当時のジブンの役割は、ストレングスコーチでした。

トレーナーになるキッカケ

トレーナーになるキッカケは、それほど大した理由はありません。
ずっとスポーツをやってきて、将来もスポーツの仕事に就きたいと思っていました。
小学校では、野球。中学で、ハンドボール。高校で、スキー。
大学でアメリカンフットボール。
アメリカも英語も好きだったので、海外とつながる仕事をしたいと考えていました。

ジブンが高校生だった1998年の頃は、インターネットも普及しておらず、情報も少なかったのですが、とりあえずアメリカに留学しようと決めました。
社会学を勉強しようと思い、アメリカの大学の学校案内を読んでいたら、その学校案内に、「アスレチックトレーナー」という言葉があったのです。
「アスレチックトレーナー」という言葉を見た瞬間、深くも考えず、アメリカに行って勉強しようと思ったのが、トレーナーになるキッカケです。

写真提供/友岡和彦(クリードパフォーマンス) Kazuhiko TOMOOKA

選手を観ずに、方法に頼っていても、結果は出せない

アメリカでは、最初に、トレーニングの方法論やメソッドを学びました。
でも、そうしたアプローチでは、選手に結果が出ないケースが、たくさんあります。
トレーナーの仕事をしていて、選手に結果が出ないことは問題です。
後から振り返ると、自分のトレーニングの方法論やメソッドに、選手を当て嵌めていたのだと思います。
なので、選手に結果が出ないことがあるのも、当然です。
本当に基本的なことですが、ジブンは、選手を観ずに、方法論だけに頼っていたのです。

重要なのは、“選手が、何を求めているか”。
ある選手にとっては、そのウェイトトレーニングが不要だったのかもしれません。
柔軟性の向上だけで、パフォーマンスがアップする可能性もあります。
もしかしたら、メンタルや栄養だったのかもしれません。
自分の考えの押し付けにならぬよう、客観的であるべきなのです。
客観的に導いた結果として、初動負荷とか、加圧トレーニングやウェイトトレーニング、ヨガやピラティスがあるのです。
そうやって選手と話しながら、何が必要なのかを試してゆくと、徐々に選手たちのパフォーマンスが上がってきました。

ひとりの人間をサポートする

選手や一般のクライアントが、なぜ特定のトレーナーのもとに集まるのか?
大前提として、知識や方法は、必要です。
でも、それだけでは、ひとりの人間をサポートすることはできません。
「この人といると、モチベーションが上がる」
「この人といると楽しい」
選手やクラアントが集まる理由は、“人”なのだと思います。

いろいろ経験し、間違いをして、深みのある人。
選手にとって、そんな人が必要とされるのだと思います。
そういう意味では、まだまだジブンは、成長段階、勉強段階です。
さまざまな体験、本を読んだり、選手にもっと良い影響を与えたいのです。

ジブンは、いっぱいの失敗をしてきました。
アメリカでの若い頃の自分は、“自分の力を見せつけよう”、“のし上ろう”と、エゴの塊でした。
英語もできない、知識もない小さなアジア人がいるだけ……と、劣等感を感じていたのです。
選手のパフォーマンスが上がらないし、良い影響も与えられないので、あからさまに指摘されたり、怒鳴られたり……、いろいろ失敗しました。

ある野球選手の指導をした時のことです。
「バッティングの動きは、こうだから、こういう意識で動きましょう」
そんな言葉を、口にしてしまいました。
見ていたバッティングコーチは、すぐにジブンを呼びます。
「カズ、ちょっと来い! お前は、いつからバッティングコーチになったのか? どこで、そのプレーをしていたのか?」
ジブンは、もちろんメジャーでプレーしていませんし、日本のプロ野球の経験もありません。
自分の職を理解し、他人の領域に踏み込まず、やるべきことをしっかりやる。
改めて、ジブンのやるべきことに気づかされました。

日本に戻って、 “失敗”の重要性に改めて気づく

2009年、日本に戻ってきました。
チームが100敗して、コーチ全員が解雇されたためです。
アメリカでは、チームをいかに勝たせるか、新しいメソッドを勉強することばかりでした。
でも、日本に帰ってから、“ひとりひとりを観る”ことに、気づかされます。

日本では、高校生、大学生、セミプロ、プロ、そういった方々をサポートしました。
そこでは、いかに、いろいろなことをするかが重要でした。
だから、「失敗しても、いいんだ」と思えるようになりました。
決まったことをすれば、ある程度の成功は得られます。
しかし、それでは成長はできません。

誰もが、失敗したくないですよね。
でも、そこが陥りがち、間違いがちなところです。
選手からも、教えてもらいました。
この方法ではダメだとか、こういうキューイング(声掛け)ではダメだとか……。
ひとりひとり、変えてゆく。
そういう経験を選手にさせてもらえたことは、とても感謝しています。

知識とかメソッドだけじゃなく、人間をサポートする。
それができる人なら、知識が劣っていても、特殊な方法がなくても、この仕事は務まるのです。

いかに、たくさんの失敗をするか……。
学ぶためには失敗せざるを得ない、それが唯一の方法だと気付きました。

この続きは、『ひと 「トレーニングを仕事にする」中編 トレーナー 友岡和彦さん』に、つながります! 

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