誰もが知る名山を、歩く人が少ないルートやアプローチで迫る“誰もいない名山”シリーズ!
第3回は、ニュースでも話題の大賑わいの、紅葉の高尾山!!
我らがtwo-nagual登山隊は、JR高尾駅の北口からバスに乗り込みました。
目指すは、戦国時代にあって関東に善政を敷いた稀代の戦国武将・北条氏の山城、八王子城!

と、今回は、城好き、街道好き、パワースポット好きのための、カルチャー登山スペシャルをお届けします。

八王子城跡から、大正天皇ご夫妻、昭和天皇ご夫妻が眠る、武蔵野御陵(多摩御陵)を望む

現代にこそ求められる、民衆のための善政を敷いた戦国武将

JR中央本線「高尾(たかお)駅」北口から、八王子城跡行きのバスに乗り込んだ、我らがtwo-nagual登山隊。
八王子城は、戦国時代に関東を掌握しながら豊臣秀吉によって滅ぼされた、北条氏の名城のひとつです。
現在は、城跡として保全され、資料館や館の跡も見学できます。

左奥の小高い丘が、八王子城。手軽に登れます!
日本百名城のひとつに、選ばれています

八王子の守護神、八王子城へ!

戦国の世にあって覇を唱えず、バラバラだった税制を改め、戦火から町を守る城壁を築き、善政を敷いた北条氏。
“いくさ”上手で知られる織田信長や武田信玄、上杉謙信と比べると地味な戦国武将ではありますが、八王子城やお隣の滝山城をひと目見れば、考え抜かれた築城技術や城下町の造りの目を見張ります。

山奥とは思えない広大な居館!
戦国時代の石垣がそのまま残る
浅川の支流、城山川

八王子城は、北条早雲の孫で、中興の祖である氏康の三男、外交手腕も冴えた名将・氏照(うじてる)の居城です。
氏照は、伊勢にルーツを持つ北条氏にあって、地元の八王子神社をお城に勧進し、八王子を守る山城としました。
今風に表現すれば、氏照は本籍を八王子に移籍し、本気の移住を宣言したようなものなのではないでしょうか。
城跡には、八王子神社の社殿が、八王子の町を見守るように静かに佇んでいます。

残念ながら氏照は、豊臣秀吉による小田原城攻めに参戦し、敗北後、秀吉より切腹を命じられます。
最後まで領民や臣下を思いやった北条氏は、開城に当たり、領民と臣下の命の保証を条件にしたとされています。
現代にも通じる、北条氏のリーダーとしての資質の高さがを感じるエピソードです。

城跡への登山口!
山上の八王子神社

城の奥には、関所へと続く山道が

八王子城をの奥に続く山道を辿ると、高尾山から陣馬(じんば)への長大な尾根に合流します。
陣馬から北西に伸びる長大な尾根は、奥多摩三山の名山・三頭(みとう)山につながる笹尾根。
今回は、高尾山から無数に伸びる枝尾根のひとつ、小仏の関所へ続く道を歩きます。

小まめなアップダウンを繰り返す尾根道には、戦国時代に人工的に尾根を削った堀が残っています。
八王子城を守る要塞化のための仕掛けで、周囲の山々にもたくさんの堀が切られています。
戦国時代、北条の武士たちは、この山道を通って甲州街道へ抜けたのです。

地図は必携!
尾根を削った堀
駒木野方面へ下ります

静かな高尾北尾根に合流すると、道しるべの数がぐっと減ります。
「小仏(こぼとけ)関所跡」という表示はどこにもないので、分かれ道ごとにチェックが必要なエリアです。
駒木野の集落を目指し、中央高速道路の下をくぐり、JR中央本線の上を抜けると、甲州街道(古道)。
いにしえの甲州街道を右に曲がれば、小仏の関所跡は目の前です。

お弁当を広げるなら、関所跡の公園か小仏梅園で

小仏の関所跡に着く頃は、お腹がペコペコですが、レストランやコンビニはないので、弁当持参が基本です。
江戸時代の旅人の気分を味わうなら、関所跡の公園がおススメ。
トイレがある公園は、関所からさらに西へ進んだ、小仏梅郷(小仏梅の郷まちの広場)になります。

小仏と言えば、中央高速の渋滞のメッカ、小仏トンネルが有名ですよね。
小仏関所は、小仏トンネルの東側、江戸の玄関となる重要な関所のひとつ。
トンネル上部には、古い甲州街道の小仏峠があり、登山道も整備されています。

ランチに最適、小仏関所跡!
昔の甲州街道は、小仏峠を越えました

高尾山から甲州街道を経て、富士山、そして丹沢・大山へ

高尾山と甲州街道は、単なる街道沿道の寺院、という以上に深い関係があります。
戦国時代のみならず高尾山周辺は、武蔵、甲斐、相模の国境紛争のいわば火薬庫でした。
各国を結ぶ街道の要所=火薬庫に位置する高尾山は、各国の武将たちのさまざまな思惑により庇護を受けます。

時代は移って、太平の世となった江戸時代には、高尾山詣での参拝客がたくさん訪れました。
一般人の移動の自由がままならない時代なので、参拝には観光旅行の意味合いも強く含まれます。
江戸からの参拝客が、高尾山、富士山、丹沢・大山の3つの霊山を巡る一大ブームが訪れるのです。

小仏の関所を含めた甲州街道の警備には、八王子の譜代旗本の「千人同心(せんにんどうしん)」が当たりました。
八王子の街中にある千人町は、この千人同心の屋敷があったことから名付けられます。
千人同心は、甲州街道の警備だけでなく日光の警護も務めましたが、多くは旧武田家の武士たちでした。

蛇滝の行場
ご存知、高尾山薬王院の大本堂

甲州街道を堪能したら、パワースポットの高尾山・薬王院へ!

お弁当を食べたら、高尾梅郷の少し先を、蛇(じゃ)滝へ向かいます。
明治初めまで修験の山でもあった高尾山には、南に琵琶滝、北に蛇滝が、滝行のスポットとして現存しています。
霊気溢れる蛇滝へのコースを辿ると、あっけないほどの時間で、ケーブルカーの高尾山駅に到着。
今も昔も参拝客が溢れる参道を歩き、薬王院(やくおういん)に向かいます。

高尾山のシンボルと言えば、天狗(てんぐ)が有名ですよね。
この天狗、実は、上州上田に由来を持つ、飯縄(いいづな)権現という神仏習合の神さまの従者でもあります。
高尾山の飯縄権現は、江戸時代は日光山輪王寺とともに、徳川によって庇護されたことが知られています。

高尾の天狗は、飯縄権現の従者です
飯縄権現を祀るお堂
温泉ゴール「極楽湯」

超人的なパワーを持つ天狗と飯縄権現にお参りしたら、目指すは温泉!
京王線の高尾山口駅には、駅直結の「京王高尾山温泉/極楽湯」があります。
露天風呂から山を眺めて、足腰の疲れを癒したら、本日の山旅は終了です。

城好き、街道好き、パワースポット好きには堪らない、誰もいない高尾山。
八王子の街や、甲州街道、神社仏閣に興味のある人に歩いて欲しい、極上トレイルです。
ということで、今回は喧噪を避けるべく、高尾山の山頂をパスしたコースをご紹介しました。

次回「誰もいない名山」シリーズは、12月19日「誰もいない高尾山PART2」。
奥深い高尾山が持つもうひとつの長大な尾根「南陵」の大ループです。
最近では“7サミッツ”の愛称でトレイルランナーたちに密かな人気のコースを、歩いて堪能します!

12月19日【東京・八王子】誰もいない高尾山PART2

トレッキング初心者のための「誰もいない名山」シリーズ

誰もが知る名山を、歩く人が少ないルートやアプローチで迫る“誰もいない名山”シリーズ。

第1弾【神奈川・丹沢】誰もいない大山

第2弾【神奈川・丹沢】誰もいない塔ノ岳